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〜頸椎椎弓形成術ハンズオンセミナー開催レポート〜


文責 医療ジャーナリスト 岡林秀明(星林社)

参考動画:
頸椎椎弓形成術を語る会 #1 全国トップレベルの医師を集結!情報発信と技術伝承
頸椎椎弓形成術を語る会 #2 リアルな模型「RealSpine」を使って、安全な手術を学ぶトレーニング!

医療を支える“見えない努力”〜頸椎椎弓形成術ハンズオンセミナー開催レポート〜 首の痛みや手足のしびれに悩む方にとって、手術を受けるかどうかは大きな決断です。その手術を「誰に任せるか」もとても重要ですが、ではその医師たちはどのようにして高度な技術を身につけ、安全な手術を提供できるようになっているのでしょうか?実は、患者さんの見えないところで日々研鑽を積み、互いに技術を磨き合う場があります。2025年3月8日、東京・日本橋ホールで首の手術に関する特別なハンズオン(実技)セミナーが開催されました。これは「頸椎椎弓形成術を語る会」と題された集まりの第1回イベントで、全国各地から脊椎外科の専門医が参加しました。主催者は京都府の亀岡市立病院 整形外科に所属する成田 渉(なりた わたる)先生です。成田先生は年間350件以上もの脊椎手術を手がける頸椎手術のエキスパートで、日本中の外科医に頸椎椎弓形成術の技術指導を行っている名医でもあります 。今回は頸椎椎弓形成術という首の手術の普及と、安全な手術技術の伝承を目的に、このセミナーを立ち上げました。 「頸椎椎弓形成術」ってどんな手術?💡 聞きなれない「頸椎椎弓形成術(けいついついきゅうけいせいじゅつ)」とは、簡単に言えば首の骨の一部を開いて神経の圧迫を取り除く手術です。首の後ろをわずか3cmほど切開し、固く圧迫されている脊髄や神経の通り道(脊柱管)を広げます 。手術時間は1時間以内と短く、出血もごく少量で済みます 。なんと手術の翌日には歩けて、約1週間で退院できるほど患者さんの負担が軽いことも大きな特徴です 。昔は同じような手術でも切開が大きく、入院期間も長く必要でした。しかし、現在では成田先生のようなトップレベルの医師たちが工夫を凝らした手術方法や技術を全国の医師に広めており、そのおかげで患者さんへの負担は驚くほど軽くなっています 。頸椎椎弓形成術は難しい名前ですが、このように患者さん思いの先進的な手術なのです。 リアルな模型で本物さながらの手術体験 当日のセミナーでは、最新の人工脊椎モデル「RealSpine(リアルスパイン)」を使った実習が行われました。これは手術中の出血まで再現できる非常にリアルな模型で、参加した医師たちは顕微鏡をのぞき込みながら、本物の手術とほとんど変わらない感覚で頸椎椎弓形成術の手技を練習しました 。実際にメスで切開を入れると模型から出血が起こり、電気メスや吸引器具を使った止血操作も必要になります。さらに驚くことに、この模型では脊椎内の靱帯(黄色靱帯〈おうしょくじんたい〉)や硬膜という膜の質感まで再現されており、メスを入れた感触がまるで生体組織のようなのです 。もし硬膜(脊髄を包む大事な膜)をうっかり傷つけてしまうと、中から**髄液(ずいえき)**が実際にじわっと漏れ出る仕組みになっていて、参加した先生方から思わずどよめきが起こりました。「模型とは思えないリアルさで、本当に患者さんを手術しているような緊張感があった」と、ある若手医師が驚きを語るほどの完成度です。 こうした高度なトレーニングが安全に行えるのも、模型相手だからこそ。実習中は成田先生をはじめ経験豊富な脊椎外科の先生方がそばについて、顕微鏡下での正確な手術手順や器具の使い方、合併症を防ぐための注意ポイントなどを細かく指導してくださいました。万が一ミスをしても患者さんへの危害はなく、むしろミスから学ぶことで「次は本番で同じ失敗をしないようにしよう」という貴重な教訓を得ることができます。参加者の一人は「安全に手術を行うためのコツを直接教わることができ、とても貴重な経験でした」と感想を述べており、模型とはいえ真剣な表情で scalpels(メス)を握る姿からは、医師たちの熱意と集中力がひしひしと伝わってきました。 全国の医師が集い、熱心に技術交流 このセミナーには、東北から九州まで全国各地の病院から脊椎専門の医師たちが集結しました。開始は午後2時、終了は夜8時頃までと長時間にわたりましたが、会場の日本橋ホールは終始熱気に包まれていました。実習の合間や終了後にはコーヒーブレイクを挟みつつ名刺交換や情報交換が活発に行われ、他病院の医師同士が垣根を越えて手術のコツや工夫を語り合う姿が見られました。ベテランの先生がこれまでの経験から得た知見を共有したり、若手の先生が日頃の疑問を質問したりと、和やかながら真剣な雰囲気です。「〇〇病院ではこうしていますが、先生の施設ではどうされていますか?」といった具体的な話題も飛び交い、参加者にとって大いに刺激になったようです。 成田先生のほか、講師役として仙台西多賀病院の山屋誠司先生(脊椎内視鏡のエキスパート)も参加され、最新技術の解説やデモンストレーションが行われました。遠方から来た先生方も多く、たとえば静岡・浜松の病院から来られた先生や関西圏の先生など、まさに全国から意欲的なドクターが一堂に会したのです 。参加者の先生たちは「自院に持ち帰って、明日からの手術に活かしたい」と口々に語り、名残惜しそうに熱い議論を交わしていました。 医療の裏側で支えられる安全──患者さんへのメッセージ 今回のセミナーのように、医師たちが所属施設の枠を越えて技術や知識を共有し合う場は、医療の安全と質を支えるうえで欠かせないものです。こうした取り組みから期待される効果は大きく、主に次のような点が挙げられます: • 医師同士の技術交流: 全国の専門医が集まり最新の手術手技や経験を交換することで、お互いに刺激を受け合い知見を広げることができます 。学会や論文だけでは得られない“生”の情報共有が、現場のレベルアップに直結します。 • 患者さんへの安全な医療提供: 技術が全国的に底上げされることで、どの地域の病院でも質の高い安全な頸椎手術を受けられるようになります。結果として患者さんの負担軽減や治療成績の向上につながります  。実際、成田先生から学んだ多くの医師が各地で安全で低侵襲な頸椎手術を患者さんに提供できるようになっています 。 • 若手医師の育成: ベテランから若手へ直接技術を伝えることで、次世代の医師が着実に成長できます。実践に近い模型トレーニングは経験の浅い医師の技術力と安全意識の向上に大きく貢献すると言われています 。将来を担う医師たちのレベルアップは、そのまま将来の患者さんの安心へとつながります。 普段、患者さんからは見えないところで、医師たちはこのような努力と工夫を重ね続けています。医療の現場では日々テクノロジーが進歩し、安全性の追求が行われているのです 。首の手術に限らず不安を感じる患者さんも多いと思いますが、その陰には「患者さんにできるだけ安全で質の高い医療を提供したい」という医師たちの熱い想いと地道なトレーニングがあることを、ぜひ知っていただければ幸いです。今回のセミナーは、まさに医療を支える“見えない努力”の一端を垣間見ることができる出来事でした。医師たちの絶え間ない研鑽があってこそ、私たち患者は安心して治療を受けることができるのです。安全な頸椎手術の裏側にある地道なトレーニングに、心から感謝したいですね。  #RealSpine#手術トレーニング#脊椎手術#成田渉#山屋誠司 #医療安全 #医師研修#脊椎専門医#患者さんに安心を

文責 医療ジャーナリスト 岡林秀明(星林社)